一昨年のテロから昨年のイラク戦争にかけて、アメリカ政府がいかにウソを並べてきたかは今さらいうまでもない。「大量破壊兵器」というのは言い掛かりに近い口実に過ぎず、実際にはアメリカ、特にブッシュの支持母体である石油関連企業の権益を守るために強引に戦争をしたというのが真相である。だが今回の一連の動きはそれだけではない、もっと根が深く深刻である。
ネオコンーもう1つのファシズム Neo-Conservative, A new type of Fascism
私は少年時代、そして社会人になっても何年かアメリカで過ごした。アメリカという国はこの私に自由というものを教えてくれた国である。私は自由と民主主義こそが人類を幸せにすると心から信じている。そしてそう信じさせて、教えてくれたのはアメリカという国である。
しかし、一昨年の9.11以降、もはやアメリカは私がかつて知っている自由の国ではなくなったことをあちこちで見せつけられることになった。実はアメリカでは現在実質的な言論や表現における統制が行われ、ブッシュに批判的なラジオパーソナリテイ、ジャーナリストが「解雇」という名の言論弾圧を受けていることは日本では不思議なほど知られていない。
問題はブッシュの支持母体で現在アメリカ中のラジオ局やテレビ局を買収しまくっているクリアチャンネルが実質的な言論統制している点だ。ブッシュに批判的なDJやキャスターを次々にクビにして、Jレノンのイマジンを始め反戦色の強い歌の放送を禁止させたことである。以前マドンナが公然とブッシュのアフガニスタン侵攻を批判した後クリアチャンネル傘下のラジオ局は軒並みマドンナの曲の放送を取り止めた。一部の独裁国家のように独房行きにはならないにせよ、メデイアのリベラル派は一掃されブッシュに批判的な人間は「解雇」という名の粛正を受けているのだ。
しかしアメリカ人もバカではない。最近になってブッシュ政権のウソがばれてきていると同時に、クリアチャンネルのロコツなまでのやりかたに批判が集まり、今は少し鉾を収めている。しかし来年の大統領選を睨んでまた牙を向く可能性が高い。
これはもはや単なる保守主義ではない。寧ろ自国の権益のためには手段を選ばない、例え同盟国ですら排除し、しかも反対者に対しては容赦ない弾圧を加える新しい形のファシズムである。アメリカ人は自分たちはヒトラーを倒したという誇りを持っているが、そのアメリカ自身が新しいファシズムに走っている。
アメリカのマスコミは死んだ American media is dead
私は日本のマスコミを擁護するつもりは全くないし、日本のマスコミ自身も大きな問題を抱えているし、いい加減な記者だって決して少なくない。しかしことイラク戦争についての報道内容に限っていえばアメリカのそれより遥かにマシである。まずアフガニスタンの戦争から、イラクの戦争に至るまでこの戦争について疑問、問題点を呈した報道はアメリカのマスコミは全くといってなかった。戦争、戦意をあおる内容の報道が目立ち、殆どブッシュの意向に沿った内容の報道をしたといって差し支えない。CNNなどは殆どアメリカ政府のスポークスマンに成り下がったといってよい。
アメリカの3大ネットワークはアメリカ政府からのアラブのアルジャジーラの報道内容を放送しないという要請をいとも簡単に受諾した。そしてメデイア内のリバラル派ジャーナリストを次々と左遷、解雇した。この状態は事実上マスコミが政府によってコントロールされていると受け取られても仕方がない状態であった。
これはアメリカだけではない。イギリスの報道機関も同様な状態になっている。いい例がかつて湾岸戦争の報道ぶりで脚光をあびた元CNNのジャーナリストのピーターアーネット氏でアメリカ軍がテロリストよりも一般市民を多く殺している現実を報道したために「不適切な報道をした」ために解雇されている。アメリカもイギリスも両国共にどうやら言論の自由はもはや存在していないらしい。実にすばらしい「自由諸国のリーダー」である。
日本のマスコミもアメリカのマスコミのこうした姿勢に対して批判は及び腰である。日本のジャーナリストって実は海外で結構バカにされていることがよくあるのだが、この時に批判しないのはやはり自分たちに自信がないからであろうか。私の知る限りこうしたアメリカのジャーナリズムの体たらくを特集で報道したのは「筑紫哲也News 23」くらいである。この筑紫哲也、日本の保守層や右寄りの人たちには極めて評判の悪いキャスターではあるがジャーナリストとしての視点ではやはり見るべきものがある(私も必ずしもいつも筑紫の主張の賛同はしていないが,,)
「報道はもはやビジネスである」といったのはマーシャルマクルーハンだったか、もしそうなら私はアメリカのメデイアは取りかえしのつかないことをしたといってよい。なぜならメデイア、報道の中立性というものはもはや存在せず、報道内容には信用が持てないことを自ら明らかにしたからである。ただ唯一の救いはアメリカ国民はメデイアの連中が思っている程愚かではないということだ。心ある人はもはやアメリカのメデイアの報道内容を信頼せず、 インターネットや別の所からの情報を検索し始めている。アメリカでは内容が信頼できない新聞をゴミ新聞"Garbage Paper"というし、いい加減な報道をしているニュース番組を"Noises"という。今アメリカの全てのメデイアがGarbageかNoiseになりつつあるのが残念である。
アメリカ、自由な国? A land of Free? True?
今、アメリカでは人前では殆どタバコは吸えない。吸っている所をみられただけで徹底的に軽蔑される。そんなのはまだいい。例えばスタジアム等で"God Bless America"をいっしょに歌わなかったら袋たたきにされる。ラジオからはクリアチャンネルの息のかかった音楽のみが流れている。そう、ハッキリいってどこかの独裁国家とそうたいして変わらないのだ。自分の知っているアメリカはこんな国ではなかった。一体どうしてこうなってしまったのだろう。絶えず多様性を許容し、誰でも自分の意見を自由に述べられたアメリカ。しかしそういった姿は今のアメリカにはない。こんなアメリカに誰がした。全てネオコンの連中が仕組んだことである。
これではかつてのマッカーシズムの「赤狩り」の時代とそう大差ない。アメリカ人よ、本当に今のアメリカでいいと思っているのか?自分の国だけそうなっているのならまだいい。それで他の国に迷惑をかけるから困るのだ。このままいくともっと事態は悪化して、より危険な方向にいってしまうのではないかという懸念が広がっている。2004年になった。何とかこの流れとは違う流れになってくれないものかと心から願う次第である。
追加ー最近の米兵のイラク 人虐待事件の米メデイア報道について
先日のアメリカ兵によるイラク人虐待事件は、アメリカ軍の本質を浮きぼりにしたが実際には米CBSは今回が報道される半年前に既に情報を得ていた。しかし米軍から「兵士の安全に支障が出る」という名目で放送を取り止めたという経緯がある。CBSは「安全上の配慮」から放送を「自粛」したといっているが、ABCが今回の虐待事件を報道してからあわてて放送を開始したというのが実情である。結果的にはCBSは米軍の圧力に屈したと受け取られても仕方がない。またアメリカ軍のこの隠ぺい工作と受け取られても仕方がない行為からも今回の事件が組織ぐるみであることは明らかである。
今回のイラク人虐待事件はアメリカでも大きな衝撃を持って受けとめられたが、CNNは湾岸戦争で捕虜になった元軍人で「今回の虐待に対する謝罪など必要無い」とまでいいきる人間を出演させるなど相も変わらず米政府よりの報道を続けている。(ちなみにアメリカ人は日本人よりメヂイアリテラシーが確立していると考える人が多いようだが、それはウソである。アメリカ人も日本人に負けず劣らずメデイアのいうことをうのみにする人間は少なくない。イラクやアフガニスタンでは実際の兵士より一般市民の方が米軍の犠牲になっているのだが殆どのアメリカ人はそれを知らない、知らされていない。日本人同様無関心な人が少なくないのである)
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